MovableTypeの紹介

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世界一使われているブログ投稿機能型のWebサイトが作れるCMSは、無料でオープンソースで高機能なWordPressです。

それはわかってはいるけれどもWordPressを使いたくない。というお話がよくあります。そんな時に検討される最有力候補としてMovable TypeというCMSがあります。

Movable Type公式サイト

ここでは、WordPressのどこに問題があって、その点がMovable Typeではどのように解決が期待できるのか?をまとめてみます。

Movable Typeについて

Movable Typeは、2001年にBen Trottという方が失業中に、妻のMena Trottがブログを書きやすいようにと開発したソフトから始まりました。その後、2人の生年月日が6日である事から、Six Apart, Ltd.(シックスアパート社)という社名で創業します。

その2年後の2003年に、フリーウェアのWordPressが初回リリースされています。

WordPressと違いMovable Typeは、シックスアパート社による買収や投資など、法人的な運用で伸びていき、2011年には日本法人がインフォコム株式会社の子会社になり、2016年にEBOを実施し、インフォコムから独立して、日本法人はシックス・アパート・ホールディングス株式会社の子会社となりました。

ここまでの流れで、フリーウェアとして爆発的に伸びてきたWordPressと、法人による法人向けな地道な運用が続けられたMovable Typeの特徴の違いがわかります。

Movable Typeの安全性

WordPressに比べて、Movable Typeは安全であると言われていますが、何故そう言われるのでしょうか?

サポートが期待できる

WordPressは無料で使えるフリーウェアですが、自由に使える代わりに設計や運用は自己責任です。全くWebの知識がない人でもワンクリックでインストールでき、技術的な事を何も知らなくても、Webサイトが作れます。

しかし、WordPressはPHPというサーバプログラムと、データベースへの頻繁なアクセスによって動いており、その内部はかなり高機能で複雑な処理が動いています。

例えるなら、オートパイロットの飛行機のようなもので、「ボタンひとつで空を飛べます。パラシュートも無料プラグインで追加しておきましたが、使い方はご自分で考えてください。」というようなものです。

専門家であれば、パラシュートの畳み方も開き方も知っていますし、オートパイロットの故障時に手動で操縦したり、修理する事もできますが、全く知識がなければ墜落を待つしかありません。

Movable Typeならば有料ですので、販売元のシックス・アパート社に「助けてください」と言えます。様々な有料サポートプログラムも用意されており、運用についても、コスト次第で期待できる契約などが用意されています。

剥き出しのプログラムと静的なHTML

WordPressの公開データはPHPというサーバプログラムで動いています。外部から不正にアクセスする事で、そのプログラムを遠隔操作し、誤動作させて悪意のある処理をさせる事ができます。

投稿データや個人データなどはデータベースに保存されていますので、WordPressのプログラムを操作して、そのデータベースにアクセスさせ、Webサイトの内容を破壊したり、重要な情報を取り出す事もできてしまいます。

一方、Movable Typeは、CMS本体はCGIやPHPなどのサーバプログラムとデータベースで動いていますが、実際に公開するWebサイトのデータは静的なHTMLです。

外部から不正アクセスして、Webサイトを破壊したり改ざんする事はできますが、そこにあるのはせいぜいWebサイトの静的なHTMLデータだけなので、データベースやCMSプログラムのほうは無傷で済みます。

しかし、Movable Typeの管理画面そのものに不正アクセスされた場合は、WordPress同様の被害を受ける事になります。WordPressもMovable Typeも管理画面を狙われたら同じなので、無防備であればどちらも同じリスクがあります。

ただ、WordPressを無防備なサーバにデフォルト設定のままセッティングすると、世界中にある自動不正アクセスプログラムにとって格好の餌食です。ID名をadminにしパスワードを1234にしておけば、最速で公開した次の日には改ざんされている事でしょう。

それに比べれば、Movable TypeのCMS構成はWordPressほどわかりやすくなく、少しだけ複雑ですので、自動プログラムの餌食にはなりにくいです。

Movable Typeの運用の手間

WordPressは、ワンクリックでインストールができるとかいう謳い文句がありますが、そのワンクリックに辿り着くまでに、そもそもセッティング済みのサーバが必要ですし、PHPのバージョンだとかSQLなどデータベースが用意されていて、公式サイトからダウンロードされた最新版のWordPressが必要です。

そして、インストールした後に、自分の思い通りにレイアウトしカスタマイズするまでに、技術者による設計やプログラム、手間が必要です。

WordPress本体や、プラグインなどを頻繁にアップデートする必要があります。

その点、Movable Typeは有料で購入する必要はありますが、サーバセッティングやらインストールまでの複雑なプロセスが至れり尽くせりで、様々な法人サポートが期待できます。

Movable Typeの速度

WordPressは管理画面からアクセスした管理者も、Webサイトを見にきた購読者も、だいたい同じようなプログラムを通して閲覧します。どちらも基本システムのプログラムが動き、データベースにアクセスして、表示するまでの手順に時間がかかります。

Movable TypeはCMSでWebサイトを作成した後、公開前に「構築」という手順が必要です。CMSそのものはWordPressよりも重く、サイト公開前に構築という処理が終了するのを数秒から数十秒待たなくてはなりません。

しかし、その構築されたWebサイトのデータはHTMLによる軽いものなので、購読者にとってはWordPressよりも高速に感じるでしょう。

Movable Typeの構築処理はサイト運用側にとっては、結構ストレスです。この時代にいちいち「構築」という手間があるCMSは時代遅れかもしれません。

しかし、筆者はWordPressで作ったサイト特有の「んー・・パッ」「んー・・パッ」と、いちいち遅れて表示されるもっさり感が嫌いです。この微妙なストレスがあると、Webサイトを定期的に見る気も失せます。

どちらを「速い」と認識するかは、企画しているWebサイトの目的によって変わってきます。

Movable Typeの価格

Movable Typeには運用方法に応じて様々なプランが用意されています。2019年12月現在の主要なものについて参考までにまとめてみました。

ライセンス価格一覧(2020年9月現在)

Movable Type クラウド版 月額5,000円から
Movable Type ソフトウェア版 90,000円(1サーバー)
Movable Type workflow pack 180,000円(1サーバー)
Movable Type ステージングパック250,000円(1サーバー)
Movable Type 年間メンテナンス 30,000円(1年)

Movable Type for AWSというアマゾンWebサービス向けのアプリケーションが用意されており、導入が簡単で大変便利です。価格は使用時間による従量制499ドル1年で、nginx版に関してはサーバによっては無料です。

その他にも、100万円以上の法人サポートが期待できるプランなどが多く用意されています。

制作費との兼ね合い

WordPressはCMSソフトウェアそのものは無料ですが、そのカスタマイズ費用を技術者に支払って仕事を依頼すれば有料です。Webサイトの製作費は、別途制作会社等に支払う必要があります。

自分ひとりで何もかもやれば、いざという時に頼る人がいませんが、依頼した制作会社や技術者がいれば、なんとかしてもらえます。

Movable TypeはWordPressのように無料のプラグインをいくつもインストールすれば強化できるというわけではありません。基本的にプラグインは1つにつき2万円~5万円程度の有料です。

しかし、WordPressも内部の大部分を技術者に製作費を支払って作ってもらっているのならば、それと同じ事をするだけなのでMovable Typeの有料プラグインでも同じです。

それならば、WordPressもMovable Typeもコストは同じくらいではないか?と思わず錯覚しますが、Movable Typeの役割はCMSの提供までで、Webサイト制作までを全て引き受けているわけではありません。

WordPressもMovable Typeも、Web制作費は別途。独自のシステムカスタマイズや、セキュリティ対策も自分で行わなくてはなりません。

結局どちらが良いか?

時代は確実に無料オープンソースに有利です。Macintosh 漢字Talk、Macromedia Director、Shockwave、Flashを通過してきた筆者としては、一企業によって運用されているMovable Typeも同じ匂いがします。

しかし、企業運営によって育てられる開発用アプリケーションは、法人レベルの運用や、ドメスティック(内政的な)社会の仕組みを学んで、スキルを磨く事ができます。

WordPressしか使っていなければ、知る事ができなかったようなWeb制作の手順をMovable Typeを通して学ぶ事ができました。

その一方で、今は時代の中心にあるWordPressを無視して、Movable Typeしか知らなければ、時代に置いていかれます。